ツイッター買収完了、今後見込まれるマスク氏の対応
(参照)ロイター
Twitterは、2020年の米国大統領選挙で明らかになったように、プラットフォームを牛耳ってきた超国家多国籍企業であるGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)をはじめとするグローバルプラットフォームの一角です。そのTwitterのイーロンマスクが握ったのはクーデータに近い。マスク氏は、民主党から共和党への支持を変えたことは記憶に新しいが、今後、凍結されたトランプ元大統領のアカウントなどの復活による米国の中間選挙への影響やビジネスモデルの変化が注目される。
Dear Twitter Advertisers
ここで、マスク氏が10/27に投稿した「広告主に向けた」Tweetの内容を見てみたいと思います。
Twitterのこれまでのビジネスモデルは、95%が広告収入で、残りはデータライセンスです。そのため、ビジネス基盤である、広告をどうするか、広告主に対してのメッセージにヒントがあると思います。
- “I wanted to reach out personally to share my motivation in acquiring Twitter. There has been much speculation about why I bought Twitter and what I think about advertising. Most of it has been wrong.
Twitterを買収した動機について、個人的に連絡を取りたいと思いました。私がなぜTwitterを買収したのか、私が広告についてどう考えているのか、多くの憶測が飛び交っています。そのほとんどは間違っています。 - The reason I acquired Twitter is because it is important to the future of civilization to have a common digital town square, where a wide range of beliefs can be debated in a healthy manner, without resorting to violence. There is currently great danger that social media will splinter into far right wing and far left wing echo chambers that generate more hate and divide our society.
私がTwitterを買収した理由は、文明の未来にとって、暴力に訴えることなく、健全な方法で様々な信条を議論できる共通のデジタル・タウン・スクエアを持つことが重要だからです。現在、ソーシャルメディアが極右と極左のエコー・チャンバーに分裂し、さらなる憎悪を生み出し、社会を分裂させる危険性が非常に高まっています。 - In the relentless pursuit of clicks, much of traditional media has fueled and catered to those polarized extremes, as they believe that is what brings in the money, but, in doing so, the opportunity for dialog is lost.
従来のメディアの多くは、クリック数を執拗に追い求めるあまり、極論を煽り、それに迎合してきました。それがお金になると信じているからですが、そうすることによって、対話の機会が失われるのです。 - That is why I bought Twitter. I didn’t do it because it would be easy. I didn’t do it to make more money. I did it to try to help humanity, whom I love. And I do so with humility, recognizing that failure in pursuing this goal, despite our best efforts, is a very real possibility.
だから、私はTwitterを買ったのです。簡単だからやったわけではありません。もっとお金を稼ぐためでもありません。私が愛する人類を助けるためにやったのです。そして、この目標を達成するためには、最善を尽くしても失敗する可能性が非常に高いことを認識し、謙虚な気持ちでそうしています。 - That said, Twitter obviously cannot become a free-for-all hellscape, where anything can be said with no consequences! In addition to adhering to the laws of the land, our platform must be warm and welcoming to all, where you can choose your desired experience according to your preferences, just as you can choose, for example, to see movies or play video games ranging from all ages to mature.
とはいえ、Twitterが、何を言っても罰せられないような、自由奔放な地獄絵図になってはいけません。例えば、映画を見たり、ビデオゲームをプレイしたりするときに、全年齢層から成熟層まで選ぶことができるように、私たちのプラットフォームは、国の法律を守ることに加えて、すべての人を温かく迎え入れ、自分の好みに応じて好きな体験を選ぶことができるものでなければなりません。 - I also very much believe that advertising, when done right, can delight, entertain, and inform you; it can show you a service or product or medical treatment that you never knew existed, but is right for you. For this to be true, it is essential to show Twitter users advertising that is as relevant as possible to their needs. Low relevancy ads are spam, but highly relevant ads are actually content!
また、私は、広告が正しく行われれば、お客様を喜ばせ、楽しませ、情報を提供することができると信じています。広告は、お客様がその存在を知らなかったサービスや製品、医療を紹介することができますが、お客様にとって正しいものでなければなりません。そのためには、Twitterユーザーにできるだけ関連性の高い広告を表示することが不可欠です。関連性の低い広告はスパムですが、関連性の高い広告は実はコンテンツなのです - Fundamentally, Twitter aspires to be the most respected advertising platform in the world that strengthens your brand and grows your enterprise. To everyone who has partnered with us, I thank you. Let us build something extraordinary together.
基本的にTwitterは、お客様のブランドを強化し、企業を成長させる世界で最も尊敬される広告プラットフォームを目指しています。私たちとパートナーシップを組んでくださったすべての方に、感謝します。一緒に何か素晴らしいものを作りましょう。
気になる元トランプ大統領のアカウントの復活は?
マスク氏は10/29のツイートで、同社が多様な視点から構成されるコンテンツモデレーション評議会を設立し、最終的に評議会の審査を経ずに大きな決定やアカウントの復活は行わないと発表。 これには、現在もプラットフォームから追放されているドナルド・トランプ元大統領に関する決定も含まれているようです。
個人的には、反トランプ勢にマスク氏率いるTwitterがどういう立ち回りをするのかが気になります。
牽制する動きも
EU欧州委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏が牽制球を投げています。
あくまで、EUのルールを遵守するよう求めている。
EUには、つい先日承認されたデジタルサービス法(DSA)があり、これを求めたものだと思われます。この法律は、ヘイトスピーチ、偽情報、その他の有害なオンラインコンテンツに関するオンラインプラットフォームの説明責任について、欧州内で前例のない新しい(より高い)基準を設定するものです。つまり、インターネットユーザーとその基本的権利の保護を強化することを目的としています。
プラットフォーム上での言論の完全な自由を求めるという思いが強いマスク氏がどこまでそのルールを守るかは未知です。
表現の自由を守り、嘘、歪曲した表現、犯罪を扇動する投稿を規制するAIを作成し、Twitterに組み込ませるのが一番合理的な気がします。
サブスクリプション型収益モデルへの移行
広告主への依存を解消するため、マスク氏はサブスクリプション型の収益モデルへの移行を示唆しています。マスク氏の計画は、GARM (Global Alliance for Responsible Media)慣行が逆転されるべきかもしれない潜在的にプラットフォームを離れる広告主の損失を相殺することであるか、また、彼のビジョンがすべての広告収入と広告主の圧力を排除することである場合、彼がプラットフォームの所有者になり、会社は非公開化されます。
実際、TwitterはすでにTwitter Blueという消費者直販のサブスクリプションモデルを立ち上げており、月額3ドルの料金でユーザーは専用機能や追加コントロール(ブックマークフォルダ、ツイートの編集と取り消し、リーダーモード、アイコンのカスタマイズなど)にアクセスすることができるようになっています。Twitter Blueは比較的新しく、2021年6月にローンチ)、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでのみ利用可能です。(日本は未発表)
但し、その移行はすぐには行われるかは不明です。
現在のTwitter Blueの月額3ドルの価格設定では、Twitterの2億1700万人の月間アクティブユーザーの67%がサブスクリプションに転換しなければ、広告の年間収入で収支が合わないことになります。グローバルなユーザーベースの3分の2がサブスクリプションモデルへの変更を、迅速に行うとは思えません。
マスク氏は買収の目的が金儲けではないと表明しつつも、ビジネスマンである以上、ツイッターの年間広告収入50億ドルを無謀にも放棄することは考えづらいからです。
Twitter社のCCOのSarah Personette(サラ・パーソネット)氏は、社としては広告主のブランドセーフティにコミットすることを最重要であるということを表明しています。
ユーザービリティがどうかわるかよりも、Twitterというプラットフォームが情報の平等が実現されることが何よりも重要であると考えます。