はじめに
日本国憲法について、家族、友人・知人、会社の同僚と会話することはほとんどないのではないでしょうか?
それもそのはず、学校の授業ではその名称ぐらいで、具体的な中身までは法学部の学生以外はほとんど読むことはないのではないでしょうか?
今、何故、日本国憲法について改めて考える必要があるのかは、遠い国、ウクライナで起こっている惨事を目の当たりにし、隣国からの脅威に晒されているからに他なりません。
国民の命を守ることは、究極の自衛。国際常識でもある。
現状は、自国民の救出を日本が他国に委ねている。それは、逆の場合でもなれば、少なくとも対等な付き合いとはいえない。これが世界の常識から逸脱した日本の姿。
残念なことに、自国民の命を助けることを「憲法違反」になるという倒錯した法理を説く政治勢力や学者、ジャーナリズムが、日本には多い。
その内なる敵への配慮から、日本にはいまだに有効な法改正ができないままです。
ご存じの通り、日本国憲法には、
- 国の政治を決める権利(主権)が国民にあるという「国民主権」
- 自由や平等といった、人が生まれながらに持つ権利を大切にするという「基本的人権の尊重」
- 戦争をしないという「平和主義」
について書かれている。
憲法改正議論が叫ばれて久しいですが、1946年に今の憲法ができてから、一度も改憲(憲法改正)されたことがない。改憲には国民による投票が必要。このやり方を決めるのが、「国民投票法」という法律。
国民的議論が巻き起こるにあたり、9条などもさることながら、まずは憲法前文で日本国の理念や理想をみていきたいと思います。そして、アメリカ合衆国や隣国との違いを把握しておくことも理解が進む一因になるのではないでしょうか。
国の理念と理想は?
- 日本
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
1946年公布、1947年施行
Source:日本国憲法前文に関する基礎的資料
まともに読んだことがなかったのですが、日本国憲法なのにやたらと他国(諸国民)や国際社会での地位や名誉に気が取られ、お人よし国家の一旦が垣間見れる前文になっています。
国際社会において、自由、平等と平和を願うのは地球人として当然かもしれませんが、他国に気を遣うのはアメリカや隣国とちょっと違う印象を持ちました。
- アメリカ合衆国
われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の静穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫の上に自由の祝福のつづくことを確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。
1787年制定
Source:アメリカ合衆国憲法wikisource.
短文でわかりやすい。トランプ大統領が掲げたアメリカファースト(自国第一主義)や国防費増強や減税政策など各種政策の礎ともいえますね。
- ロシア連邦
われら、ロシア連邦の多民族の人民は、運命を共にわれらが大地で、人間の権利と自由を確立し、市民の平和と調和を確立し、歴史上確立された国家の結束を維持、人民の平等と自決の普遍的原理より進み、祖国への敬愛をわれらに伝え、善と正義の信念をわれらに伝えた祖先の思いを尊敬し、ロシアの国家の地位を復興し、確固としたその民主主義の原則を主張し、ロシアの安寧と繁栄を確実にもたらす努力、現在と未来の世代より前のわれらの祖国への責務より進み、世界共同体に存在する我らを自ら認識し、ロシア連邦憲法を制定する。
1993年制定
Source:ロシア連邦憲法wikisource.
民主化運動の波でソ連は崩壊したが、元々共産主義の理想を掲げたソ連は、自由と人権を抑圧する全体主義国家でもあったことから、民主主義の原則を謳うのには少々違和感を感じる。
現に、「大国の復活」という野望を抱くプーチン大統領の下で、欧米主導の世界秩序への挑戦がまさに起こっており、民主主義陣営と対峙している。
- 大韓民国
悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は、3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚して、正義・人道と同胞愛で民族の団結を強固にし、全ての社会的弊習と不義を打破し、自律と調和を土台に自由民主的基本秩序をより確固にし、政治・経済・社会・文化のすべての領域において各人の機会を均等にし、能力を最高度に発揮してもらい、自由と権利に拠る責任と義務を完遂するようにし、(国)内では国民生活の均等な向上を期し、外(交)では恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することで我々と我々の子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを確認しつつ、1948年7月12日に制定され8次にわたり改正された憲法を再度国会の議決を経って国民投票によって改正する。
1948年公布施行
Source:大韓民国憲法wikisource.
自国の歴史を書いている点が他国との違いでしょうか。歴史にこだわっている割には、歴史を歪めているという皮肉な国家。
- 中華人民共和国
中国は、世界でも最も古い歴史を持つ国家の一つである。中国の諸民族人民は、輝かしい文化を共同で作り上げており、また、栄えある革命の伝統を持っている。
一八四〇年以降、封建的な中国は、次第に半植民地・半封建的な国家に変化した。中国人民は、国家の独立、民族の解放並びに民主と自由のために、戦友の屍を乗り越えて突き進む勇敢な闘いを続けてきた。
二十世紀に入って、中国には天地を覆すような偉大な歴史的変革が起こった。
一九一一年、孫中山先生の指導する辛亥革命は、封建帝制を廃止し、中華民国を創立した。しかし、帝国主義と封建主義に反対するという中国人民の歴史的任務は、まだ達成されなかった。
一九四九年、毛沢東主席を領袖とする中国共産党に導かれた中国の諸民族人民は、長期にわたる困難で曲折に富む武装闘争その他の形態の闘争を経て、ついに帝国主義、封建主義及び官僚資本主義の支配を覆し、新民主主義革命の偉大な勝利を勝ち取り、中華人民共和国を樹立した。この時から、中国人民は、国家の権力を掌握して、国家の主人公になった。
中華人民共和国の成立後、我が国の社会は新民主主義から社会主義への移行を一歩一歩実現していった。生産手段私有制の社会主義的改造が達成され、人が人を搾取する制度は消滅して、社会主義制度が確立した。そして、労働者階級の指導する労農同盟を基礎とした人民民主主義独裁、すなわち、実質上のプロレタリアート独裁は、強固になり、発展した。中国人民及び中国人民解放軍は、帝国主義と覇権主義の侵略、破壊及び武力挑発に打ち勝ち、国家の独立と安全を守り、国防を強化した。経済建設では、大きな成果を収め、独立した、比較的整った社会主義の工業体系がほぼ出来上がり、農業生産も著しく高められた。教育、科学、文化等の事業は、大きな発展を遂げ、社会主義思想の教育では、顕著な成果を収めた。広範な人民の生活は、かなり改善された。
中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国共産党が中国の各民族人民を指導し、マルクス・レーニン主義及び毛沢東思想の導きの下に、真理を堅持し、誤りを是正し、多くの困難と危険に打ち勝って獲得したものである。我が国は、長期にわたり社会主義初級段階にあるため、国の根本的任務は、中国の特色ある社会主義という道に沿って、力を集中して社会主義現代化の建設をする事にある。中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「三つの代表」の重要思想、科学的発展観及び習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想に導かれて、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革開放を堅持し[2]、社会主義の各種制度を絶えず完備し、社会主義市場経済を発展させ、社会主義的民主主義を発展させ、社会主義的法制度を健全化し、新たな発展理念を貫き、自力更正及び刻苦奮闘につとめて、着実に工業、農業、国防及び科学技術の現代化を実現し、物質文明、政治文明、精神文明、社会文明及び生態文明の調和のとれた発展を推進して、我が国を富強、民主的、文明的、調和とれたきれいな社会主義国家として建設し、中華民族の偉大なる復興を実現するであろう。
我が国では、搾取階級は、階級としては既に消滅したが、なお一定の範囲で階級闘争が長期にわたり存在する。中国人民は、我が国の社会主義制度を敵視し、破壊する国内外の敵対勢力及び敵対分子と闘争しなければならない。
台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の一部である。祖国統一の大業を成し遂げることは、台湾の同胞を含む全中国人民の神聖な責務である。
社会主義の建設という大きな仕事は、労働者、農民及び知識分子に依拠し、団結できるすべての勢力を団結しなければならない。長期の革命、建設及び改革の過程において、中国共産党の統率的指導のもとで、各民主党派と各人民団体が参加し、社会主義的勤労者、社会主義事業の建設者、社会主義を擁護する愛国者及び祖国統一を擁護し中華民族の偉大なる復興のために尽力する愛国者のすべてを含む、広範な愛国統一戦線が結成されたが、この統一戦線は引き続き強固になり発展して行くであろう。中国人民政治協商会議は、広範な代表性を持つ統一戦線の組織として、これまで重要な歴史的役割を果たしてきたが、今後、国家の政治生活、社会生活及び対外的な友好活動において、また、社会主義的現代化の建設を進め、国家の統一と団結を守る闘いにおいて、更にその重要な作用を発揮するであろう。中国共産党指導の下における多党協力及び政治協商制度は長期にわたり存在し、発展するであろう。
中華人民共和国は、全国の諸民族人民が共同で作り上げ、統一した多民族国家である。平等、団結、相互援助、調和の社会主義的民族関係は、すでに確立しており、引き続き強化されるであろう。民族の団結を守る闘争の中では、大民族主義、主として大漢族主義に反対し、また、地方民族主義にも反対しなければならない。国家は、全力を尽くして全国諸民族の共同の繁栄を促進させる。
中国の革命、建設と改革の成果は世界人民の支持と切り離すことができない。中国の前途は、世界の前途と緊密につながっている。中国は、独立自主の対外政策を堅持し、主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵及び平和共存の五原則を堅持し、平和的発展の道を堅持し、互恵ウィンウィンの開放戦略を堅持して、諸国家との外交関係及び経済・文化交流を発展させ、人類運命共同体の構築を推進する。また、帝国主義、覇権主義及び植民地主義に反対することを堅持し、世界諸国人民との団結を強化し、抑圧された民族及び発展途上国が民族の独立を勝ち取り、守り、民族経済を発展させる正義の闘争を支持して、世界平和を確保し、人類の進歩を促進するために努力する。
この憲法は、中国の諸民族人民の奮闘の成果を法の形式で確認し、国家の基本となる制度及び任務を定めたものであり、最高の法的効力を持つ。全国の諸民族人民並びにすべての国家機関、武装力、政党、社会団体、企業及び事業組織は、いずれもこの憲法を活動の根本準則とし、かつ、この憲法の尊厳を守り、この憲法の実施を保障する責務を負わなければならない。
前文長すぎ。自国民ですらその内容をしるものはほとんどいないのではないでしょうか。
それにしても中国共産党ならびに指導者の名前が連なっているというのも独裁国家らしい内容です。
一番見逃してはいけないポイントは、はっきりと台湾は中華人民共和国の一部だと書かれている。祖国統一を責務としている点ではないでしょうか。
Source:中華人民共和国憲法wikisource.
まとめ
いまだ全く見通しが付かない憲法改正ですが、国民投票に向けて、大前提として憲法前文は最低でも理解しておくべきだと考えます。
国民投票自体は、そこまで複雑ではないと思いますが、「国会議員による憲法改正の発議」がプロセス上どうしても必要になるため、及び腰の国会議員、貴方の地元の代議士のスタンスを確認しておくべきだと思います。
国民党投票制度の詳しい詳細は総務省のHPをご参照ください。https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/kokkai.html